「よぅ、お嬢さんが神子姫様かい?こりゃまた、あの2人は華のある美人を連れて来たもんだ」
「はぁ………………」



ヒノエの父だという赤髪の男は、湛快と名乗った。



「確か……、さんって言ったな?ようこそ、『京』へ。歓迎するぜ?我らが日女神サマ」




『京』………………!?
それが、この異世界の名前なのか。




「ヒノエと敦盛は………、あなたに命じられて、私を連れに来たと言いました。異なる衣を着て倒れているからすぐに分ると。」
「あぁ、そんなことも言ったっけか」
「あなたに取ってそれは、私が『こちら』に来るのが予め予定されていたということなんでしょう?神子姫―…日女神。戯れの言葉にしては、やけに口調に力が入ってますしね。」



そう口にした途端、俄に湛快さんの瞳に思わず射竦まれてしまいそうな光が宿った。


「………………さん。アンタ、何が言いたい?」
「では、単刀直入に言わせていただきます。―――……あなたは、いえあなた方は、いったい何を私にお望みですか?」
「――――……くっ、ははははっっ!!…いや、アンタすげぇな、さん。普通なら異世界なんぞに来ちまったら、混乱するもんじゃねぇのか?」



いや、一応混乱はしてるんだけどね。



「――俺の妻は口寄せの巫女殿でね。一月前に、御神託が下ったんだよ。“天龍の神子が降臨される。汝らの使命、決して忘れるな”って。」
「使命……………ですか?」
「そう。代々熊野別当は天龍の神子―…つまりさん、アンタのことだ―…を庇護し、その役目を助ける任があったんだ。」




天龍の神子……が、私………!!?



「………ちょっと待って下さい、湛快さん。私の、天龍の神子…の、役目とはなんですか?だいいち、私は……何故、私が『選ばれ』たのかすら、分らないんです」
「………それは、俺が答えるべきことじゃねぇな。さん、アンタを“喚んだ”相手から、それ直接聞いた方がいいんじゃねぇのか?」





私、を………“喚んだ”相手…………。
















殿、だいじょうぶか?」
「ホラ、女房から衣、あずかってきたぜ。早く着てみろよ!」


濡縁に腰掛けてぼんやりとしていると、敦盛とヒノエが手に手に着物を持ってとたとたと廊下を渡ってきた。


「んー、大丈夫だよ。ちょっとぼんやりしてただけだから。衣って…私に?ありがとね。」


くしゃくしゃと頭を撫でると、2人はくすぐったそうにそのあどけない瞳を細めた。


様。湛快様より様の御世話を仰せつかりました、ヌイと申します。御召しかえの手伝いに参りました。何卒、よろしく御願い致します。」


そう言って現れたのは、どうやら25の私とどっこいの歳らしい女房さんだった。


「あ、こちらこそどうかよろしくお願いします、ヌイさん。じゃあ敦盛、ヒノエ、また後でね?」


ひらひらと手を振り、は自分に宛てがわれた部屋へと入り、ヌイの指示通りに鏡の前に座ろうと、した。







(へ…………………………………!!?)





目の前に映っているのは、確かに己の顔。




      だけど、これは……………………………………………




「あの、ヌイさん」
「はい、なんでしょうか様。」
「……………私、大体いくつ位に見えます?」
「そうですねー…私よりいくつか下のように見えますし、二十歳…ではありませんか?」


「……………………やっぱり、そう見えますよね……」
「はい?」


やはり、自分の見間違い等ではなかった。
鏡に映るの髪型は、肩を越すか越さないかという程度のセミロング。






しかし、がこの髪型をしていたのは数年も前のこと。
そう、は若返っていた――…すなわち、セミロングであった5年前の、20歳に。





(これは………あれなのかな、私を“喚んだ”人のサービス?)



異世界への来訪という非現実的なショックの為に一時的に精神が麻痺してしまったのか、はさほど動揺してはいなかった。
突然に異世界へと飛ばされた事を考えれば、自分の年齢が多少若くなった事など些末な問題に思える。





………………あまり、歓迎されたことではないのだろうが。











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                                       あっつんを叩くなんて耐えられない!!という心優しい神子様は                                          
                                           どうかやさしくぽちっとして差し上げてください。






>>>後書きという名の言い訳
……………主人公、若返らせちゃいました。話の展開上どうしても必要だったので…
でも幼児化には踏切れなかったなんともチキンな自分がいます(^_^;)
次回にはとうとうあの方がご登場ですwww
どんな風に主人公、ちびズに絡めていこうかと楽しみながら鋭意執筆中ですので、どうぞ皆様気長にお待ち下さい。

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