その唇は紅き血に濡れて

モドル | ススム |

  その関係は血の結びつきよりも濃く、強く  

今でも鮮明に思い出せる。

俺がの月代になった日のことを。

7年前の、あの赤い満月を。









「………………ねぇ。」
「なんだ?」


は俺の血に満足したらしく、俺の肩に寄掛かって適当にチャンネルを合わせたTVを見ている。


「アイツ、どうしてる?」


アイツ、の言葉でが暗に示す相手はすぐに分った。


「別に、普段と変わりがなかった。貴女が失踪したと言っても、余裕たっぷりのご様子だったが?」
「…………相変らずの自信家だね、景吾は?」


ふぅ、と小さくは溜息をついてみせた。


「貴女の従兄弟だというのに、性格は本当に似ていないな」
「幸いなことに、ね。ていうか、若の親族でもあるじゃない?」
「………………………」


そう、俺が所属している氷帝男子テニス部の部長である跡部 景吾とは従兄弟同士だ。
ちなみに家と日吉家は先々代同士が婚姻関係を結び、俺とは血縁関係にある。
(幸か不幸か日吉家にその後吸血鬼が生まれることはなかった)




今回の事の発端は、跡部さんがを「許婚」と言い出した1ヵ月前に逆上る。
跡部さんがにべったりとくっつき出したのは、ちょうど8年前のことだった。
その頃にと跡部さんの間で何があったかは知らないし、知ろうとも思わない。

だが後日、の父である当主に彼女自身が白状させた所、弱味をどこからか探り出した当時の跡部さんに脅され、彼をの許婚と認めさせられたらしい。
『末恐ろしい七歳児だった』と当主は俺の顔を見る度にこぼす。
当時はも、月代ではまだなかった俺も、そんなことがあったなんて露知らず、この歳まで育ってきた。




モドル | ススム |

-Powered by HTML DWARF-

inserted by FC2 system