その唇は紅き血に濡れて
その関係は血の結びつきよりも濃く、強く
「………それにしても、まさか本当にやるとは思わなかった」
「なにが?」
「貴女が失踪すると言い出した時のことだ。」
「あぁ………あれね。」
はくすくすとおかしそうに笑った。
彼女がこんな風に、ただ純粋な笑顔を見せるのは、本当に気心のしれているごく限られた者のみだということを俺は知っている。
「まぁ、良い機会だと思ったし。まさか、あんなにすんなりと若とお祖父さまが許してくれるとは思ってなかったけどね?」
「…………………あの方はに甘いからな。」
………そして、この俺も。
正直、自分が以外の誰かに仕える姿など、想像することすら出来ない。
――…日吉家は代々、“夜魔の一族”に仕える“久月の一族”の家系だ。
俺は夜魔の一族本家の娘、 を守り、補佐する“月代”と呼ばれる存在。
「………………若」
「なんだ?」
「お腹へった」
「さっき夕飯食べただろう」
「そっちじゃない。…………分ってるくせに」
む、と少し膨れてみせるをからかいをこめた視線で見やる。
俺はシュッとネクタイを取ると座っていたソファにかけた。
カッターシャツも脱いで、同じくソファにそれを引っ掛ける。
上半身を空気に曝した俺の膝に乗ったが、サラリと目にかかった俺の前髪をその白く細い指でかきあげた。
「ここ……怪我、してる」
「鳳のノーコンボールが当たっただけだ。」
「血…………まだ滲んでる。包帯は?」
「それほどまでの物じゃない。」
確かに軽く血は出ているが、本当に大したことはない。
額の怪我は大体流血が多いものだ。
「あーぁ………もったいない」
の赤い舌がチロリと俺の傷口に触れ、僅かに滲んでいた血を舐めあげた。
「…………つっ………」
独特のひりつく痛みに、思わず顔をしかめる。
「やっぱり若の血、おいしいね?でも―……これじゃ、足りない。」
その言葉と共に、ゆっくりと俺の首筋に牙が突き立てられる。
俺はの躯を支えながら、ゆっくりと甘い痛みに身を委ねた。
>>言い訳という名の後書き。
やっと設定書けました…………!!
前々から私には「日吉に跪かれたいw」という至極危険な想像(妄想)があったので、な
んかもううきうきしてます。
日吉の言葉には気を遣いましたねー……。
いくらなんでも主人にお前呼ばわりはないだろということで、貴女と呼ばせております。
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